新しいクリエイティブを考えるとき、いちばん重いのは最初の一手です。何もないところから訴求を決める——これをゼロから毎回やるのは、正直しんどい。だから多くの人は、まず競合を見に行きます。ツールを開いて、条件を入れて、並び替えて、目ぼしいものを探す。その「探しに行く」時間そのものを、なくせるとしたらどうでしょうか。
マーケティング支援を手がける株式会社スーア様は、動画広告分析Pro(DPro)のMCPをAIエージェントにつなぎ、競合クリエイティブの動きを自分たちのSlackに毎日流れてくる状態にしています。良さそうなものがあれば、その場で自社向けの台本を3案つくらせる。バナーの生成まで通し、いまは1日6本ほどが生まれています。代表取締役の青木駿汰様が強調するのは、しかし自動化そのものではありませんでした。「自社のナレッジの粒度がないほど、精度がぶれる」。その中身を伺いました。
この事例のキーワードが「MCP」です。むずかしそうに聞こえますが、ざっくり言うと「AIに、外部のツールやデータを”直接つないで”使わせる仕組み」のこと。ここでは「自社のAIに、DProが集めた広告データをそのまま読ませて、そこから先の作業まで任せる」イメージだと考えてください。専門知識がなくても、”データをAIにつなぐ”という発想さえ掴めれば大丈夫です。
お話を伺った方
会社名:株式会社スーア 様
事業:マーケティング事業。市場分析やデータドリブンな戦略立案から、クリエイティブ制作、広告運用、効果測定までをワンストップで支援(神奈川県横浜市/2024年6月設立)
お名前・役職:青木 駿汰 様(代表取締役)
公式サイト:https://suea.co.jp/
「探しに行く」と「向こうから来る」は、まったく別のもの
スーア様がDProのMCPで組んでいるのは、大げさな仕組みではありません。青木様の言葉を借りれば「ほとんどモニタリングのようなもの」です。
AIエージェントにDProのMCPをつなぎ、ベンチマークしている数社の広告クリエイティブの動きを、毎日Slackに流れてくるようにしている。それだけです。ただ、この「それだけ」が効きます。
探しに行くのと、向こうから来るのとでは、まったく違うと感じます。とりあえず見る、という状態になる。タイムラインのように。
株式会社スーア 代表取締役 青木 駿汰 様
ゼロから発想を立ち上げるのはしんどい。だから、まず情報に触れるところから始めたい。ところが従来のやり方だと、その「まず触れる」ために検索して絞り込む手間が先に来ます。ツールの反応を待つ時間も含めて、めんどうくささが積み上がる。
流れてくる形にすれば、その手前が丸ごと消えます。Slackを開いた瞬間に、もう思考が始まっている。青木様が「AIから来るのは大きい」と言うのは、そういう意味です。
見て終わりにせず、その場で台本を3案つくらせる
流れてきたクリエイティブを見て「これは良さそうだ」と思ったら、そこから先も同じSlackの上で進みます。
市場でいま効いているクリエイティブを踏まえたうえで、自社商材の台本を考えさせる。しかも3つの異なるAIモデルに同じ指示を出し、3案を並べて出させるという組み方です。2日に1回ほどのペースで、3案がSlackに届きます。
どのモデルが良い答えを出すかは、事前には読めません。今回はこちらが良くても、次は別のモデルが良い。だったら3つ出させて、人が選べばいい——出力が毎回ぶれることを、欠点ではなく前提として設計に織り込んでいます。
バナーは1日6本。訴求違いが毎日生まれる
同じ流れは、画像広告にも通っています。流れてきた市場データをもとに、そのままバナーを生成するところまで通してしまう。
結果として、バナーの制作本数がはっきり増えました。いまは1日6本ほど。キャンペーンごとに2つほど走らせるので、訴求の違うクリエイティブが毎日生まれる状態になっています。
動画も同様です。撮影はAI素材でほぼまかなえるものもあり、台本はDProのデータと自社の知見を読み込ませて生成する。ハイブリッドで組んでいるといいます。
一方で、青木様は線を引いている場所もはっきりさせていました。広告の入稿だけは自動化していません。「そこはちょっと怖いので」。生成の物量を上げることと、配信を無人にすることは別だ、という判断です。
また、すべてのジャンルで同じようにいくわけでもありません。スキンケアのように実写の信憑性が要になる商材では、AIで作った人物を出すと信頼が落ちてしまう。逆に無形商材、たとえば転職のように「その後の未来」を描く類のものは相性が良い。スーア様が扱う案件は無形商材が多く、そこが噛み合っているという話でした。

※ 本数・パターン数はいずれも青木様の体感・実運用ベースの数字で、案件やジャンルによって変わります。
もう少し具体的に、クリエイティブができるまでの流れで見てみます。

本当に効いていたのは、自社の”型”を言語化してあったこと
ここまで読むと「MCPをつなげば同じことができる」と思われるかもしれません。青木様の答えは、そこではありませんでした。
自社のナレッジの解像度、その粒度がなければないほど、精度がぶれるなと思います。
株式会社スーア 代表取締役 青木 駿汰 様
スーア様は、案件を通じて掴んだ勝ちパターンを11ほどのパターンに言語化して持っています。たとえばリード獲得の案件では、顕在層を狙いすぎてもうまくいかないことがある。複数社と比較する前提の人と、初回の接触でそのまま決める人とでは、効く見せ方が変わる——そうした知見を、案件ごとの経験則で終わらせず、社内のナレッジとして言葉にしてある。
その型と、DProから流れてくる市場のデータを掛け合わせる。だから出てくるものが自社のものになります。
逆に言えば、この型がないままAIに「良いものを作って」と指示しても、返ってくるのは汎用的なものだけです。市場データを引いてきてレポートらしくまとめ、それを眺めて終わる——MCPをつないでも、そこで止まってしまうケースは珍しくありません。
差がつくのは、つないだかどうかではなく、掛け合わせる自社の型を持っているかどうかでした。
どこまでを仕組みに任せ、どこを人が握るのか。整理すると次のようになります。

まとめ:データは向こうから来させて、型は自分たちで持つ
スーア様の事例が示しているのは、2つのことです。
ひとつは、競合データを「探しに行く」から「向こうから来る」に変えるだけで、思考の入口がまるごと軽くなること。ゼロイチのしんどさは、情報に触れる手間を消すことでかなり減らせます。
もうひとつは、そこから先の精度を決めるのは自社側だということ。市場のデータは誰にでも同じように届きます。それを自社のものに変換するのは、言語化された自分たちの型です。
流れてくる仕組みを作ること。掛け合わせる型を持つこと。この両方が揃ったとき、1日6本という制作量が意味を持ちはじめます。
「競合の動きを探しに行くのをやめて、自社のAIに流れてくる状態にしたい」——そう感じた方は、まず自社の勝ちパターンがどこまで言葉になっているかを確かめるところから。動画広告分析Proに相談してみませんか?
